妊婦検診について

 2001年度厚生科学研究費補助金事業の分担研究「HIV母子感染予防の臨床的研究」班の研究成果が、11月28日の第16回日本エイズ学会で発表された。過去3年間の全国調査を基にしたもので、調査結果によると、妊婦HIV抗体検査の実施率は全国的に上昇傾向にあったが、依然として地域差がみられた。また、母子感染予防では、標準的対策となっている妊娠中の抗HIV薬の予防投与と帝王切開分娩の有用性が確認されたという。

予防投与と帝王切開が有用
 同研究の目的は、HIV母子感染の予防を目標として、妊婦に対するHIV抗体検査の実施状況、HIV感染妊婦やその出生児の管理状況について、産婦人科、小児科の両面から全国調査を実施し、日本でのHIV感染妊娠の動向を経年的に検討すること。

 昨年度は1次調査として、産婦人科1670施設、小児科3350施設を対象に調査用紙を送付した。産婦人科、小児科ともに調査用紙の有効回答率は約60%だった。HIV抗体検査の実施率は、「各病院での分娩件数」×「各病院での抗体検査実施率」÷「分娩件数」×100=「検査率」として分析された。

HIV抗体検査率の地域差

ブロック 1999年 2000年 2001年
北海道・東北 68.5% 74.8% 75.0%
関東・甲信越 89.2% 95.1% 96.6%
東海・北陸 80.0% 88.4% 90.8%
近畿 61.6% 79.3% 79.0%
中国・四国 44.7% 53.8% 64.1%
九州・沖縄 32.9% 40.5% 51.5%
平均 73.2% 79.7% 82.6%

 調査結果によると、99年〜01年の妊婦HIV抗体検査率は、99年=73.2%、00年=79.7%、01年=82.6%と増加傾向。地域間格差は年々減少しているものの、中国・四国ブロックや九州・沖縄ブロックなどの地域は、依然として検査率が低かった。全体で、妊婦全例にHIV抗体検査を実施している病院は57.5%あったが、12.8%は全く検査を実施しておらず、検査率と同様、病院間格差がみられた。

 HIV抗体検査の陽性者は、99年=62例、00年=40例、01年=28例で、以前の調査を含めた日本のHIV感染妊婦は累計310例となった。妊婦10万例当たりの陽性者の割合は、99年=15.9例、00年=10例、01年=7.9例。

 昨年度までの調査による感染妊娠は延べ248妊娠。93年から増加傾向にあった感染妊娠は、99年の40妊娠をピークに00年=32妊娠、01年=24妊娠と減少傾向に転じていた。しかし、国籍別にみると、日本国籍の感染妊婦の頻度が増加していることから、今後、感染妊娠が再び増加する可能性があるという。

 248妊娠中、帝王切開分娩は130例(うち2例が母子感染)。このうち80例(61.5%)には母子感染予防として、妊娠中に抗ウイルス薬が投与されていた。とくに、98年以降は抗HIV薬の多剤併用であるHAART療法が多用されており、同療法施行例のほとんどは妊娠中で、十分にウイルス量が低下していた。経膣分娩例への抗ウイルス薬投与は6.9%で、母子感染をきたした例には投与されていなかった。HIV感染妊娠の母子感染率は、経膣分娩=29.4%、帝王切開分娩=1.9%で、帝王切開分娩のほうが明らかに低率だった。

「HIV妊婦からの感染出生児は29例」
 小児科での全国調査によると、HIV感染妊婦からの出生児は累計170例。このうち29例がHIVに感染し、27例は母子ともに周産期に感染防止対策が施行されていなかった。感染児の転帰は無症状9例、エイズ発症6例、死亡10例ときわめて不良だった。

 調査結果から、報告書は「今後も妊婦に対するHIV抗体検査の普及によるHIV感染の早期発見と抗HIV薬の投与、および予定帝王切開術はHIV母子感染の基本対策と考えられる」と結論づけている。

情報提供:Japan Medicine(株式会社じほう)
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