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T-20についてのもう少し詳しい話
新着ニュースで何回かご紹介してきたT-20の性質について、バルセロナ会議の抄録の中から少し詳しい情報を入手しましたのでご紹介します。
T-20は、またの名を「エンフューヴィルタイド(enfuvirtide)」、商品名「Fuzeon」と呼ばる、従来の抗HIV薬とは全くことなる、新しいタイプの薬です。
どこが新しいかというと、これまでの抗HIV薬(逆転写酵素阻害剤、プロティアーゼ阻害剤)はウイルスが私たちの健康なT細胞に入ってしまってからそれがその細胞内部で複製を作るのを邪魔するという薬でした。これに対して、このT20はそもそも最初の段階の、T細胞自体に入り込むことを邪魔してしまう、つまり、入り口でシャットアウトしてしまう、という点です。 
融合阻害剤(フュージョン阻害剤)
HIVがまず最初に私たちのT細胞の中に入ることを「フュージョン(融合)」と呼んでいます。それを邪魔するので、この薬の性質を「フュージョン阻害剤」と呼びます。またもっと分かりやすく「細胞侵入阻害剤(エントリー・インヒビター)」とも呼びます。
融合、つまり健康なT細胞への侵入を邪魔するメカニズムは簡単に言えばこういうことです。T20はHIVの表面にあるgp41というタンパク質にくっつく性質を持っています。するとHIVの表面の形が変わってしまって、いままではぴたっとはまっていたT細胞の表面の形と合わなくなってしまう。それでどうにもT細胞にくっつけなくなってしまうのです。 
T細胞にくっつけないと、その次の段階である、中に入り込んで自分のコピーを作って増殖するまでにも至れません。これまでの抗HIV薬は、この、中に入り込んでコピーを作るという作業の「逆転写」と「タンパク質分解」に関する酵素の働きを邪魔するものでした。対して今回のT20は、酵素を相手にして間接的にHIVの動きを邪魔するのではなく、HIVそのものにくっついて、その動きの第一段階から邪魔するという画期的な新薬なのです。
米国、欧州、豪州、南米の計112の病院で行った治験で、従来のカクテル療法にT20を組み込んだ326人中121人、つまり37%もの患者・感染者が血液中のウイルス数が推薦値まで減るという、予測を上回るものでした。T20を与えられなかった患者・感染者では従来のカクテル療法だけでしたが、そちらでウイルス量が減ったのは165人中27人、16%にとどまりました。 
追試験でも28%対14%という同様の結果でした。効果は歴然です。また、T20を含めたカクテル療法ではCD4の数値も改善されています。 
よいことずくめのような報告ですが、問題も残っています。   
その第一は、この薬が注射薬であることです。皮下注射で1日に2回打たなくてはなりません。
第二には副作用があります。注射した場所の皮膚が炎症を起こしがちだといわれています。また、日本では医療者以外の人が注射を行うことはできませんから、とても使いにくいということになります。
錠剤型の別のフュージョン阻害剤の開発が待たれます。 
さらに、T20も他の抗HIV薬にもありがちな下痢や吐き気、めまい、疲労感、不眠、頭痛を伴うことがあります。実際の臨床での注射量など、さらに詳しい研究と情報の蓄積が必要でしょう。 
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