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カンボジア:「信頼」がエイズ拡大招く恐れ 妻との交渉でコンドーム使わず 変化求められる男性の性行動 |
| HIV感染を知りながら他の者に感染させることを犯罪とするエイズ対策法を可決するなど、エイズ問題に積極的に取り組むカンボジアで今、男性がパートナーの女性に寄せる信頼が「新たな脅威」になっている。信頼し、愛しているためにコンドームを使わないからだ。一方、パートナーの女性は、コンドームを使ってほしいと思いながらも、根強い男優位社会のために、それを言えないでいる。愛情で結ばれている関係だけに、保健の専門家も対応に苦慮している。カンボジア男性の性行動に変化が求められている。
【カンボジア北部シエムレアプIPS(ロザリオ・リキシア記者)】 数カ月前にHIV検査を受けたムニーは、この数週間、いらいらし通しだ。それでも、検査結果を聞くのが怖くて病院には行けないでいる。 「パートナーの彼女は陰性だった。だから、僕も大丈夫だと思う。でも、もしHIVに感染していたらと思うと、知るのが怖い」。ゲストハウスで働く23歳のムニーがHIV検査を受けたのは、彼女が強く望んだからだった。 ムニーは、彼女以外の女性とも関係を持つ。ナイトクラブやカラオケバーで出会う女性たちが相手だ。そのときは必ずコンドームを使う。しかし、彼女とのときは使わない。「彼女の相手はぼくだけだから」と理由を説明する。 ムニーの友人で、オートバイで旅行客を寺院などに案内する仕事しているベトナム系カンボジア人のアート(20)も、「HIVが怖いから、彼女以外の女の子とはコンドームを使う」という。しかし、ムニーと同じく、パートナーとのときは使わない。 ムニーもアートも、多くのカンボジア人男性と同様、HIVの危険をよく知っている。そして、性感染症(STD)から身を守るためにコンドームを使う。 ▽政府キャンペーンの成果 問題は、性産業で働く女性たちと関係を持つときだけコンドームを使うことにある。性産業内でのHIV・STD対策にはなっても、男性客のパートナーの女性に感染させることで、感染拡大を引き起こすことになると考えられているからだ。 今のところ、売春宿や歓楽街での完全なコンドーム使用を目指す政府キャンペーンは、HIV感染拡大防止に効果を上げている。しかし、保健専門家は、パートナーとの性交渉でコンドームを使わない傾向について、キャンペーンの成功を弱めることになりかねないと危惧している。 国連エイズ合同計画(UNAIDS)によると、カンボジアのエイズ感染率は1999年末時点で4%を超えていたが、政府の幅広い全国的な対策実施で、2001年末には2.7%に減少。HIVに感染している15歳から49歳までのカンボジア人も、97年末の21万人から、01年末には16万人に減少した。 今年7月には、国連開発計画(UNDP)はカンボジアの状況について、「2015年までにHIV・エイズの感染拡大を食い止め、逆転させる」との目標を達成しそうだと報告した。 ▽問題はコンドームの使い方 しかし、同国のヘルスワーカーは、愛し合う2人の間でコンドームが使用されない傾向が、これまでの成果を脅かすことになるのでは、と危惧している。 パートナーとの性交渉でコンドーム利用率が低いことは、非政府組織(NGO)ポピュレーション・サービス・インターナショナル(PSI)がプノンペンで実施した質的調査でも確認された。調査は、男女学生、縫製工場の女子従業員、オートバイやシクロの男性運転手、セックスワーカーを対象に、グループディスカッション形式で行われた。 9月中旬に発表されたPSIの報告「エイズ時代の愛・性・コンドーム」によると、パートナーとの性交渉でコンドームを使わない第1の理由は、世界のほかの地域と同様、パートナーへの信頼で、「愛しているほどコンドームを使わなくなる」という。コンドームの使用が「疾病予防や売春婦と関連づけられる」からだ。パートナーとの性交渉でコンドームを使う場合、目的の1つは避妊だった。 ▽「信頼」がエイズ対策の弱点に 一方で報告は、男から処女だと思われたり、誠実な妻だと信じられている“善良な女性”との性交渉では、コンドームは必要でないとする男の“信仰”を浮かび上がらせた。 コンドームを使わなくても男には危険が少ないとの認識もあるため、「ほとんどの男性は、大切にしている女性の感染源になっている事実を知らないと思われる」と同報告は指摘。昨年の政府報告も、HIVに感染している既婚女性のほとんどは、夫からうつされたことを明らかにした。 シエムレアプで活動するNGO「バンテー・スレイ」でソーシャルワーカーとして働くネアン・サケンさんは、既婚女性たちと議論した際、女性たちから、セックスのときにコンドームを使ってほしいと彼女らの夫に伝えてくれるよう頼まれた。女性たちは、夫が売春宿に通っていることを知っているが、夫に「コンドームを使ってほしい」とは言えないのだ。 パートナーとの性交渉でコンドームが使われない傾向が高まっていることについて、ケア・カンボジアのHIV・エイズ・プログラムの責任者で医師のソク・プンさんは、取り組むべき問題だが、簡単なことではないとし、「干渉は難しい。“パートナーを信用するな”とはどうしても言えないからだ」と対応の困難さを指摘する。 同氏は、カンボジアがエイズとの闘いに勝ちたいならば、行動様式を変えなければならないとした上で、「HIV・エイズは急激に拡大する。効果的な対策を講じなければ、後手に回るだろう。拡大する前に、素早く行動しなければならないのだ」と警告する。 【メモ】カンボジアのHIV/エイズ カンボジアで初めてエイズが発見された当時、HIV感染者のほとんどは性産業で働く女性だった。しかし、夫の買春行為を主な原因としてHIVは国民のすべての層に広がった。これまでの調査で、男性の70%が買春経験があることも明らかになっている。カンボジア国会は今年6月、HIVに感染していると知りながら他の者に感染させることを犯罪とするエイズ対策法を可決した。国会の法案審議では、男性の買春に批判が集中した。 |